オーダースーツ研究所とは
四ツ谷麹町オーダースーツ「Regalis Japan Group」が運営する「オーダースーツ研究所」は、スーツの基礎知識から歴史、近代オーダースーツのトレンド、設計・デザイン、ブランド同士のコラボレーション思考までを調査する専門機関です。
我々リサーチャーは、さまざまな生地メーカーや作り手のこだわり、技術を探求し、その成果を無料のレポートおよびコラムとして発信しています。
本研究所の目的は、読者の皆様がご自身のワードローブを判断し、自信を持って「本物」を選び取るための、事実に基づいた客観的な情報を提供することにあります。
シワを決定的に防ぐ!ジャケットの「リバーシブル畳み」の基本
オーダースーツのジャケットは、既製品に比べ、肩周りや胸元に立体的な“いせ込み”が施されており、その美しい曲線こそが品格を決定づけます。そのため、適当に折り畳んでしまうと、最も目立つ背中や肩に致命的なシワが入りかねません。
出張や旅行、あるいは単なる持ち運びの際に、この立体感を崩さずに運ぶための最適な方法が、「リバーシブル畳み」(または裏返し畳み)です。この方法は、ジャケットの表地を内側に包み込むことで、摩擦によるシワや汚れから守る効果もあります。
ステップ1:片方の肩を裏返す(最も重要)

- ジャケットを裏返して平らな場所に置きます。この際、フロントボタンは全て開けておきます。
- 片方の肩(例:右肩)の内側に手を入れ、そのまま肩パットごと裏返します。
- 裏返した肩を、裏返していない反対側の肩(左肩)に合わせるように被せます。
- このとき、裏返した右肩のライニング(裏地)が左肩のライニングと綺麗に重なるように、形を整えます。この動作で、ジャケットの表地が内側に来ている状態が完成します。
ステップ2:背中の中央で縦に折る
- 裏地が外側になった状態で、ジャケットを背中の中央線(背割線)で縦半分に折ります。
- 肩から裾まで、折り目が線状にならないよう、丸みを意識して軽く二つ折りにします。ここで強く折り目をつけないことが重要です。
ステップ3:横方向から巻き上げる
- 縦に半分に折ったジャケットを、裾から襟に向かって、軽く巻き上げるか、三つ折りに畳みます。
- 芯となるもの(例:丸めたTシャツや靴下など)を中央に挟んでから巻き上げると、カドのシワを防ぐことができます。
このリバーシブル畳みは、スーツの型崩れ防止に最も優れているため、数日間の出張や、トランクケースに入れて運ぶ際に最も推奨される方法です。
運搬を賢くする「内巻き畳み」と「収納の鉄則」
リバーシブル畳みでもシワの発生をゼロにすることはできませんが、次に紹介する「内巻き畳み」と、荷造りの際の「収納の鉄則」を組み合わせることで、着いたらすぐ着用できる状態を維持することが可能になります。
応用編:よりコンパクトな「内巻き畳み」

リバーシブル畳みが難しい場合や、さらにコンパクトに収納したい場合は、以下の「内巻き畳み」が有効です。
- ジャケットを裏返さずに、両肩の裏地に手を入れ、肩から腕にかけての生地を整えます。
- 片方の肩(例:右肩)を、襟元から肩山に沿って反対側の肩(左肩)の内側に入れ込みます。
- このとき、内側に入れた方の袖(右袖)が、反対側の袖(左袖)に綺麗に収まるように整えます。
- 両袖が重なったら、全体を背中の中央で縦半分に折ります。
- 最後に、襟元から裾に向かって、ジャケット全体を丸めて完了です。
内巻き畳みは、リバーシブル畳みに比べて簡単でコンパクトですが、表地が外側になるため、汚れや摩擦に注意が必要です。
荷造りの鉄則:重さを分散させ、芯を作る
収納する際は、畳んだジャケットに余計な圧力がかからないように、パッキングの位置を工夫します。
- バッグの中央に配置する: スーツケースやバッグの底ではなく、衣類の中央にジャケットを配置し、周囲を他の衣類(セーター、Tシャツなど)で囲むようにします。
- 丸めたタオルを芯に: 畳んだジャケットの真ん中や、折り目の近くに丸めたタオルや靴下を配置することで、変形を防ぐ「芯」の役割を果たします。
- 重いものは下に: 靴や洗面用具などの重いもの、硬いものは、必ずスーツケースの底面(キャスター側)に置き、ジャケットに圧力がかからないようにします。
到着後のケアが「未来への投資」:シワを伸ばすテクニック
どんなに完璧に畳んでも、移動中の圧力や湿度の影響で、多少のシワは発生してしまいます。到着後の「ひと手間」こそが、スーツの寿命と品格を保つための未来への投資です。
最終手段:スチームとハンガーの活用
- ハンガーにかける: 到着後、すぐにジャケットを厚みのあるハンガー(木製が理想)にかけます。これは、型崩れした肩のラインをすぐに元に戻す効果があります。
- バスルームの蒸気を利用: お風呂にお湯を張り、湯気で充満させたバスルームに、ジャケットを15分〜30分程度吊るしておきます。この自然なスチームが繊維を緩ませ、細かいシワを自然に伸ばしてくれます。
- 霧吹きで水分を与える: 急いでいる場合は、ジャケット全体に軽く霧吹きで水を吹きかけ、そのままハンガーにかけて放置します。翌朝にはほとんどのシワが目立たなくなります。ただし、生地によっては水シミの原因となるため、目立たない裏地で試してから行いましょう。
避けたいNG行為:アイロンの直接使用
宿泊先のアイロンを使用する場合でも、直接アイロンを当てるのは避けてください。高温のアイロンが直接触れると、生地にテカリ(アタリ)が生じ、特に光沢のある高級生地では回復不可能になる可能性があります。必ず当て布を使用するか、浮かせた状態でスチームのみを当ててシワを伸ばしましょう。
まとめ:移動中も「本物」の品格を保つ
オーダースーツは、着用者の品格を映し出す「資産」です。その価値は、仕立ての良さだけでなく、いかに大切に扱われたかによって決まります。
リバーシブル畳みは、出張先でもあなたのスーツが最高のコンディションを保ち、重要な場面での「信頼感」を担保するための、基本的なマナーと言えます。
Regalis Japan Group株式会社が目指す「次の100年を担う呉服商」という哲学は、スーツを単なる衣服として終わらせず、次世代へ継承されるべき「本物」として扱う、着用者側の意識にも深く関わっています。正しい畳み方と到着後のケアを実践し、あなたのワードローブを最上の状態で保ってください。
FAQ(よくある質問)
- Q: スーツケースがない場合、紙袋に入れても大丈夫ですか?
- A: 紙袋は形状が不安定で、移動中にシワや型崩れの原因になりやすいです。可能であれば、型崩れを防ぐガーメントバッグか、不織布などのバッグにリバーシブル畳みで収納することを強く推奨します。
- Q: 畳んだジャケットをキャリーケースのどこに入れるのが最も良いですか?
- A: キャリーケースの中央(衣類の上)に配置し、周囲を他の衣類で緩衝材のように囲みます。重いもの、硬いものは必ず底面(キャスター側)に置き、圧力をかけないようにしてください。
- Q: リバーシブル畳みで、裏地が見えるのはマナー違反になりませんか?
- A: リバーシブル畳みは、スーツを保護するための運搬中の手法であり、人前で畳んだ状態で披露するものではありません。運搬中のシワや汚れを防ぐための最善策であり、マナー違反には当たりませんのでご安心ください。