オーダースーツ研究所とは
Regalisのリサーチャーが、スーツの基礎知識から歴史、近代オーダースーツのトレンド、設計・デザイン、ブランド同士のコラボレーション思考までを調査する専門チームです。国内外の生地メーカーや職人の技術を取材し、読者が日常で使える客観的情報を無料で届けています。ここでは既製品とオーダースーツの「寿命」の違いをデータと事例で整理します。
先に結論:寿命の「3軸」でオーダーが逆転する
3つの寿命
オーダースーツは「見た目の寿命」「生地の寿命」「設計の寿命」の3軸で長持ちします。価格は高くても、形崩れしにくい設計と補修前提の構造により、総所有コストで既製品を逆転しやすいのが特徴です。

こんな人に向く
- 2〜3年で買い替えているが、結局高くついていると感じる人
- 毎日着る頻度が高く、シルエットの崩れが早いと悩む人
- 体型変化に合わせてお直ししながら長く着たい人
寿命1:見た目の寿命(シルエット)
フィット感が崩れにくい理由
- 肩線と肩パッド:体型に合わせて肩線とパッド厚を調整するため、肩が落ちにくい。
- 立体パターン:前肩・巻き肩補正で袖のツッパリを減らし、シワが入りにくい。
- 余白設計:膝幅・裾幅をミリ単位で設定し、クリースが消えにくい。
既製品で起こる典型的な劣化
- 裾幅が広くて裾が靴に当たり、半年でテカり・擦り切れが発生。
- 肩線がずれ、半年で肩が浮き、袖山に放射状のシワ。
- 膝抜けでセンタープレスが消え、だらしなく見える。

寿命2:生地の寿命(摩耗・テカり)
数値で見る生地の耐久
- 目付(ウェイト):240〜270g/m²のビジネス用ウールは、日常使用で3〜5年が標準。300g/m²前後のフランネルは防寒と耐久に強い。
- 織り:ツイルやホップサックは摩耗に強く、平織りの軽量生地は通気性と引き換えに耐久が落ちる。
- 糸番手:Super120’s以上は光沢が増す一方、毛羽立ちやすく耐久が下がる。日常使いはSuper100’s前後が妥当。
テカり・摩耗を防ぐ運用
- ローテーション:最低3着を回すと着用間隔が2日空き、繊維が復元する。
- ブラッシング:帰宅後5分のブラッシングで皮脂・ほこりを除去し、光沢の劣化を防ぐ。
- クリーニング頻度:シーズン1回が目安。溶剤が毛の油分を奪うため出し過ぎは逆効果。
寿命3:設計の寿命(直しやすさ)
お直し前提の縫製
- ウエスト出し:縫い代を1.5〜3cm確保し、体型変化に追従。
- 袖丈調整:本切羽でも縫い代を残し、±1.5cmのリサイズを想定。
- パンツ丈:シングル裾でも再仕上げできるよう余り布をキープ。
既製品との構造差
| 項目 | オーダー | 既製品 | | — | — | — | | 縫い代 | 多めに確保、直し前提 | 最小限 | | 芯地 | 総毛芯やハーフ毛芯で復元力◎ | 接着芯が多く、劣化で波打ち | | 袖ボタン | 本切羽でも調整幅を確保 | 飾りボタンが多い |
総コスト試算:5年間の実質コスパ
- 既製品(4万円)を毎年買い替え:5年で20万円。シルエット劣化の期間が長い。
- オーダー(10万円)を5年維持:お直し合計1.5万円を見積もっても11.5万円。常にフィット感を維持。
- 差額:5年で8.5万円の節約に加え、常時ベストシルエットを維持できる無形価値が残る。
まとめと次の一手
- 寿命は「見た目・生地・設計」の3軸で考えると意思決定しやすい。
- 日常使いならSuper100’s前後の生地+毛芯仕立て+縫い代確保が最適解。
- 予算が同じなら「着数ローテーション×お直し前提」で総コストを下げる。
まずは現在のスーツの摩耗ポイント(肩・裾・膝・テカり)をチェックし、買い替えかお直しかを判断すると次の一着の条件が明確になります。